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Sugi Guitars(スギギター)の特徴、ギターモデル、オーダーの流れ

Sugi Guitarsオーダーベース

Sugi Guitarsとは

Sugi Guitarsは、長野県松本市に工房を構えるハイエンドギターメーカー。2002年に元フジゲンで製品開発を担当していた杉本眞氏が立ち上げた。社名はスギ・ミュージカル・インストゥルメンツ有限会社。

自身の理想を結実させた設計で20〜30年後には銘器と称されるような製品を作り、皆に弾いてもらいたい」という杉本眞氏の理念の元、少数精鋭のスタッフで丁寧な作業を心がけている。

そのクオリティは国内外で評判となり、MUCCのMIYA氏やYUKKE氏、ゲスの極み乙女の休日課長氏など多くのアーティストに愛用されている。

ルシアー杉本眞氏の経歴

杉本眞氏は1976年に渡米し、楽器販売会社のELGER(エルガー)社(※1)でリペアとメンテナンスを学んだ。帰国後、両親が在籍していた富士弦楽器製造(現:フジゲン株式会社)に入社。同社でギターやベースの試作、アーティストモデルの企画など多岐に渡り活躍してきた。

1985年には、企業買収(親会社のCBSが売却)で工場を失ってしまったFender(フェンダー)の技術支援チームに抜擢され、ハイエンドギターを専門に製造する部署「Fender USA Custom Shop」の立ち上げに尽力。杉本氏は世界でも活躍した経歴を持つ、日本を代表するルシアーの一人である。

その後、杉本氏は2002年にフジゲンを退社し、自身の名を冠したSugi Guitarsを設立。「将来ヴィンテージと呼ばれるギターを作りたい。」という杉本氏の思いを実現すべく、時間をかけてハイクオリティなギターやベースを生み出している。

(※1)ELGER社:星野楽器がアメリカ・ペンシルバニア州で合弁設立した楽器販売会社

SUGIギターの特徴

極上のトップ材を惜しみなく使用

Sugiのギターには、ほとんどのモデルで極上のトップ材が使用されている

メイプルではキルト、スポルテッド、カーリー。その他、ポプラ、ウォルナット、ブビンカなど他社ではお目にかかれないような希少なトップ材ばかり。

驚くべきは、その厚み。Sugiのトップ材の厚みは、10mm以上を基本としている。それにより、見せかけだけでなく、極上のトーンウッドとして良質な音色を得られるのがSugiギターの特徴のひとつ。

アクアティンバーメイプルの採用

Sugiのギターやベースには、多くのモデルでネック材に「アクアティンバーメイプル」が採用されている。

アクアティンバーは、水中に100年以上眠っていた木を引き上げて乾燥させた木材。「タイムレスティンバー」と呼ばれることも。
木材内部の樹脂がバクテリアに食べられることで密度が高くなり、低温の水中で長年育つことで弦の張力に負けない強度なネック材になる。

Sugiのユーザーの間でネックが強いと評判になっているのは、この希少なアクアティンバーメイプルのおかげだろう。また、トラスロッドは順反りと逆反り用に2本仕込まれているので、経年変化に強いギターになっている。

参照:タイムレスティンバーとアクアティンバー / フジゲン

アクアティンバー/タイムレスティンバーについては以下の記事で詳しく解説している。

SUGI / DS496C
タイムレスティンバー / アクアティンバーとは ‐ 水中に100年以上眠っていた木を引き上げて乾燥させた木材タイムレスティンバーとは 「タイムレスティンバー(Timeless Timber)」は、アメリカの五大湖に沈んでいた丸太を引き揚げ、乾...

オリジナルピックアップ搭載

Sugiのギターには、自社生産のオリジナルピックアップが搭載されている。

シリーズによっていくつかラインナップがあるが、どのピックアップにも共通しているのが、独特のヴィンテージサウンドと楽器のポテンシャルを最大限に引き出す性能。ヴィンテージ感とパワー感の両方を兼ね備えているため、Sugiのギターはジャンルを問わずにどんな音楽でも使いやすい。

Sugi Guitarsでは、ピックアップ手巻き機を完備しており、ピックアップメーカーへの発注前に自社でサンプルを作ってサウンドチェックを行っている。Sugiギターの良質なトーンは、「極上の木材」と「こだわりのピックアップ」の賜物と言えるだろう。

コウモリのモチーフの由来

Sugi Guitarsと言えば、コウモリのモチーフが印象的。コウモリをモチーフにした決め手は、「幸福を運んでくる縁起の良い動物」だからだと杉本氏は話す。

裏話として、設立当初の事務所にたまたまコウモリの白骨が転がっていたことから、仮のモチーフとして採用したことが始まりだったとも言われている。今ではSugi Guitarsのトレードマークとして有名なコウモリだが、その背景には偶然と杉本氏のノリが大きく関わっていたようだ。

Sugi Guitars NB4IR POP/ASH2P/BSBK

Sugi Guitarsの代表的なギターモデル/ベースモデル

Sugi Guitarsの代表的なギターモデルとベースモデルをいくつか紹介。

DSシリーズ

DSシリーズは、デタッチャブルネック(ボルトオンネック)とソリッドボディの組み合わせになっている。Sugiのトレードマークとも呼べる左右非対称のダブルカッタウェイのボディが魅力的だ。

DS496はHH、DS499はピックガードマウント式のTHが基本となっているが、オーダーでピックアップのレイアウトを変更できる。

SHシリーズ

SHシリーズは、セットネックとホローチェンバーボディの組み合わせになっている。ボディシェイプは、シングルカッタウェイとダブルカッタウェイの2種類で、HHピックアップが基本だ。

軽量かつ温かみのあるトーンが魅力的なギターになっている。

Sugi Guitars SH485E BM-PRM/A-MAHO/Bat Inlay/PLB"Luthier's Show Model

Rainmaker(レインメーカー)

Rainmakerは、Jackson/Charvelのマスタービルダーであるティム・ウィルソン氏がハンドメイドで手掛けているシリーズ。基本デザインはDS499と同じだが、ピックアップはTHレイアウトのみ。

メイプルネック、アルダーボディなど、随所にFenderテイストを散りばめつつ、チョーキング時の音詰まりを最大限軽減した設計になっている。

Rainmakerはベースも用意されており、PJタイプのピックアップを搭載したパワフルなサウンドが特徴的だ。

Sugi Rainmaker RMG R/NM/ALD DakotaRed

NBシリーズ

NBシリーズは、Sugiのベースで一番人気のシリーズ。ボディシェイプは同じだが、4弦ベースから6弦ベースまで用意されている。

スケールは35インチ。ネック材はメイプル、アクアティンバーメイプル、ウォルナットの5P。指板はココボロ。ボディ材はエキゾチックメイプルトップにアルダーバックが基本仕様になっている。

セミオーダーでは、各木材やパーツを任意に変更でき、オンリーワンのベースを提供してくれるのが魅力。
Sugi Guitars NB5M BM-PRM/ASH/Moon-bat Inlay/PLB"Luthier's Show Model

SUGIギターのオーダーの流れ

Sugi Guitarsでは、ギターやベースのセミオーダーを受けている。そのオーダーの流れは、以下の通り。

  • 1.問い合わせ
  • 2.仕様決定
  • 3.制作
  • 4.納品

問い合わせ

Sugi Guitarsでセミオーダーを依頼する際は、以下の2通りの問い合わせ方法がある。

  • Sugi Guitarsにメールで問い合わせる
  • Sugi Guitarsの取扱店を経由して問い合わせる

筆者もSugi GuitarsにNBシリーズのセミオーダーを依頼したが、最初の問い合わせは後者を選んだ。なぜセミオーダーが必要なのか、どんなベースを作りたいのか、担当者と打ち合わせすることでより明確にしたかったからだ。

個人で問い合わせをするのは少々緊張したので、取扱店の担当者に仲介を頼めたのは幸いだった。

仕様決定

セミオーダーの話を通してもらったので、改めて仕様について取扱店の担当者とリペア担当の方を交えて打ち合わせをした。

筆者がNBシリーズのセミオーダーを依頼したのは、首に疾患があるのでとにかく軽い5弦ベースが欲しかったからだ。無理を承知で理想3.5kg、最低でも3.8kgの5弦ベースにして欲しいと伝えた。

指定したのは、以下の点だ。

  • ボディ材
  • 指板材
  • 塗装
  • 金属パーツの色
  • 電気系統

通常のNBシリーズではトップ材にエキゾチックメイプルを貼っているが、筆者は軽量化を優先して上質で軽量なアッシュ1Pで依頼した。当初からどんなに重くても総重量が3.8kgまでと伝えていたので、条件に当てはまるアッシュを探してもらった。

指板材はエボニーかローズウッドかで迷ったが、結果的にローズウッドを採用した。音質的に柔らかい音が好みだったので、ローズウッドの方が良いだろうとリペア担当の方に助言をもらったからだ。

塗装はオリジナルカラーを要望し、その通り仕上げてもらった。全体的に黒いベースにしたかったので、ブラックバーストと木目を白くしてもらいたいとサンプルを送ったのだ。Sugi Guitarsの製品には無い色だったが、見事に再現してもらえて感動した。

Sugi Guitarsオーダーベース

NBシリーズで唯一嫌いだったのが、金属パーツの色だ。NBシリーズは基本的にゴールドパーツが採用されているのだが、筆者のNB5は黒を基調としているので、楽器の色味と合わないと感じていた。そこで、コスモブラックという黒っぽいクロームに変更できると聞いて変更を依頼した。

既製品との一番の違いは、電気系統だろう。NBシリーズはパッシブのシングルピックアップを2基マウントしているが、筆者はこのピックアップをシリーズ/パラレル切り替えができるように注文した。スイッチは増設したくなかったので、トーンコントロールにプルスイッチを付けてもらい、手元で切り替えができるようになっている。このおかげで瞬間的なブーストや曲によって音色の切り替えができるようになった。

Sugi Guitarsオーダーベース

制作

細かい仕様が決まったら、Sugi Guitarsでの制作が始まる。当然、他のアーティストや取扱店からもオーダーが入るので、タイミングによっては順番待ちが必要だ。筆者が仕様を提出してから納品されるまでには、おおよそ4ヶ月かかった。

その間、取扱店の担当者経由で過程の写真撮影を依頼していたので、時折届く写真がすごく楽しみだったのは今でも忘れない。

Sugi Guitarsオーダーベース

納品

完成した筆者のNB5は、取扱店に発送された。

Sugi Guitarsオーダーベース

連絡をもらい、取扱店で担当者を交えてサウンドチェックをしたところ、そのクリアでバランスの良い音に唖然としたのを覚えている。肝心の重量も3.8kgに収まっていたので、背負っても重量感を全く感じない。弦高も低めにセッティングされていたので、そのまますぐにライブができるレベルだった。

Sugi Guitarsに直接依頼する際は、おそらく自宅に納品されるのだろう。近くにSugi Guitarsの取扱店がない方は、直接問い合わせをしたほうが注文や受け取りの手間が省けると思う。

ボディシェイプは変えられないが、材質や仕様にこだわりがある方は、ぜひセミオーダーを検討してみて欲しい。

ABOUT ME
執筆者:ユザワ屋
フリーライター。愛機:Sugi NB5(セミオーダー)。ロックバンド「COACH」のベーシストやアマチュアレコーディングエンジニアとしても活動中。