ギターモデル

Fender Swinger(フェンダー・スウィンガー)

Fender Swingerとは

Fender Swinger(フェンダー・スウィンガー)は、フェンダーが1969〜1971年に製造していたギターモデル。短期間しか製造されなかった希少なコレクターズアイテム。

ヘッドにモデル名が刻印されておらず、Fenderロゴの後ろに塗装の上からSwingerのシールが貼られていた個体があったことから、この名前が通称となった。別名「Musiclander(ミュージックランダー)」や「Arrow(アロー)」とも呼ばれる。

2019年にFender Japanが日本製モデルとしてSwingerの名前で復活させた。

Swingerが開発された経緯

Swingerが短期間での製造であったのと、独特なボディシェイプをしているのには理由がある。

フェンダー社は、1965年に世界初の5弦ベース・Fender Bass V(フェンダー・ベースV)を販売開始した。ところが、ボディサイズや形状が受け入れられず、かなり数の加工品が在庫として残ってしまう。

加えて、MusicmasterDuo-Sonicの初期モデルなどで使われていた22.5インチスケールのショートスケール・ネックが不人気で、こちらも在庫が大量に余っていたそうだ。

Bass Vのボディと22.5インチスケールのネックの在庫を消化するため、2つを組み合わせて作られたのがSwingerである。

Bass Vを加工した結果、あのような特徴的なボディになった。Swingerのボディ下側が他のモデルよりも大きいのは、元になったBass Vのボディが大きかったからだ。

特徴的なヘッドは、従来のヘッドデザインから変えるためにアコースティック・ギターのように丸くしていき、端を切り取っていった結果、槍のような形になったそうだ。元がMusicmasterやDuo-Sonic用に作られたネックなので、加工して別の形状にしていた。

Swinderはフェンダーの販促資料には載せられず、フェンダーのセールスマンが営業回りの際に売り歩いたと言われている。

同じような事情で同時期に作られたのが、Fender Custom(フェンダー・カスタム)、別名Maverick(マーヴェリック)と呼ばれるモデル。こちらは、12弦ギターのFender Electric XIIなどの端材を集めて作れたそうだ。

Maverick(Fender Custom)はこちらの記事で詳しく紹介。

Fender USA/Parallel Universe Volume II Maverick Dorado Firemist Gold
Fender Maverick(Fender Custom)Fender Maverick(Fender Custom)とは Fender Maverick(フェンダー・マーヴェリック)は、フェ...

Bass Vは現行のベースモデルよりもボディが長く、面長に見える。Bass Vの長いボディをリシェイプした結果、Swingerの独特な形状が生まれた。

1969年製造のSwinger。カラーはレイクプラシッドブルー

Vanzant(ヴァンザント)が「Broken Arrow」というモデル名でSwinger風のギターを販売している。カラーは深緑っぽく見えるが、こちらもレイクプラシッドブルー

Swingerの特徴

  • ヘッド
    ヘッドは二等辺三角形のような尖った形をしている。MusicmasterやDuo-Sonicのネックの先端部分を丸く加工して、あのような形になった。
  • ネック / スケール
    ネックはメイプルにローズウッド指板(ラウンドボード)。22.5インチのショートスケール。フレット数は21。
  • ピックアップ
    フロントにシングル1基搭載の1ピックアップ。ノブは1ボリューム、1トーン。復刻版では2ピックアップ仕様のモデルも販売されている。
  • ボディ
    Bass Vの加工済みのボディを使用。ピックガードを外すと、リアピックアップのあたりの位置にBass V用のピックアップキャビティがある。

    木材は主にアルダーで、アメリカン・バスウッドを使った個体もある。Bass Vのボディを消化した後は、主に安価なポプラ材を使っていた。

  • ピックガード
    Musicmaster Ⅱのピックガードを使用。ボリュームノブとトーンノブは、ピックガードと切り離した金属製のプレートの上に設置。これもMusicmaster Ⅱと同じ仕様。
  • ブリッジ
    ブリッジもMusicmaster Ⅱと同じものを使用。鉄板を折り曲げて加工したシンプルな設計。ブリッジサドルは3ウェイ。

復刻版Swinger

オリジナルを忠実に再現した「Fender LIMITED SWINGER」。ヘッドの「Swinger」のロゴはステッカーで任意で貼れるようになっている。デフォルトはオリジナルと同じくヘッドにロゴなしの仕様。

2ピックアップ、22フレット、610mmショートスケールネック仕様の「Fender SWINGER」

King Gnu 常田大希シグネイチャーモデル

Fenderから、King Gnuの常田大希シグネイチャーモデル「DAIKI TSUNETA SWINGER」がリリース。2021年限定モデルとして販売。日本製のSwingerをベースに、常田大希の理想を実現したカスタマイズが施されている。

DAIKI TSUNETA SWINGER | Fender

DAIKI TSUNETA SWINGERの特徴

  • STEP1
    ボディ材
    バスウッド
  • STEP1
    ネック材
    メイプル
    ネックは「Uシェイプ」
  • STEP1
    指板ラディアス
    9.5インチ(241mm)
  • STEP1
    スケール/フレット数
    24インチスケール(610mm)
    フレット数は22
  • STEP1
    ピックアップ
    メタルカバー装備のソープバータイプ・ピックアップを2基搭載
    (オリジナルはシングルピックアップ1基)
  • STEP1
    ペグ(マシンヘッド)
    Deluxe Cast/Sealed Locking(ロック式チューナー)
  • STEP1
    スイッチ
    3トグルスイッチ
    1.ブリッジピックアップ/2.ブリッジ&ネックピックアップ/3.ネックピックアップ
  • STEP1
    コントロール
    1ボリューム、1トーン
  • STEP1
    ブリッジ
    6-Saddle Vintage-Style Synchronized Tremolo
    (シンンクロナイズドトレモロ)
  • STEP1
    ピックガード
    1プライのべっ甲ピックガード
    (オリジナルと形状が異なる)

Swingerの試奏動画

1969年製造のSwingerの試奏動画。

こちらはKAMINARI GUITARSが完全オールハンドメイドで制作したSwinger’69。本家にはないトレモロアーム付きのモデル。

ABOUT ME
執筆者:稲垣 健太(ケンタトニック)
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

音楽関係の仕事の経験、ギター製作の経験、音楽教室に通った実体験をもとに、音楽に役立つ情報を発信。

■音楽歴
中学2年生の時にギターを始める
大学で軽音楽部に所属し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムを演奏
2023年4月にギタークラフトの専門学校・ESPギタークラフトアカデミー大阪校(GCA)に入学
ギター製作やリペアの専門技術・専門知識を習得中

■音楽関連の仕事歴
[2006〜2009年]
大手CD・レコード販売店でロック、ジャズの仕入・販売を担当。
[2011年〜]
フリーランスのWebライター・Webディレクターとして開業。
大手音楽教室からの委託でボイトレサイトの運営、ボイトレ記事の執筆・編集に携わる。

■音楽教室の通い歴
[1995〜2000年まで]
某大手ギター教室に通う
[1997〜2002年まで]
某大手ドラム教室に通う
[2021年〜現在]
某大手音楽教室のボイトレ・話し方コースに通い中
ESPギタークラフトアカデミーにて月3回プロギタリストによる演奏授業を受講

■愛機
Stilblu #036 / #039 /#099
g'7 special(g7-TLT Type 2S)
Nashguitars S-57
Tom Anderson(Drop Top Classic -Deep Tobacco Fade)
TMG Gatton Thinline
Fender Custom Shop 1956 Stratocaster NOS
Gibson USA Exclusive Model / Les Paul Standard 60s Honey Lemon Burst

所有ギター一覧

■製作したギター
ギタークラフトアカデミー第1作目:
ポリゴンライン
ギタークラフトアカデミー第2作目(製作中):
Stand -Alone


■好きなバンド
U2、Sigur Ros、THE 1975、Mr.Children、the band apart、くるり、SIAM SHADE、VAN HALEN

■ブログ ギタークラフト製作日記