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Ernie Ball Music Man(アーニー・ボール・ミュージックマン)

StingRay Special 1H

Ernie Ball Music Manとは

Ernie Ball Music Man(アーニー・ボール・ミュージックマン)は、米カルフォニア州に本社を置くErnie Ball(アーニー・ボール)社の子会社・同社のギターブランド。

もともとはMusic Man社という独立した会社であったが、1984年にアーニー・ボール社に買収されてErnie Ball Music Manという社名/ブランド名になった。Ernie Ballはギター弦などを販売するギターアクセサリーメーカーで、1957年に起業家のアーニー・ボール氏(1930〜2004年)が立ち上げた。現在は息子のスターリン・ボール氏がCEOを務める。

アルバート・リー、Eddie Van Halen、Totoのスティーブ・ルカサー、Dream Theaterのジョン・ペトルーシといった著名ギタリストのシグネイチャーモデルを扱っている。

Music Manの歴史

  • 1971年
    Music Manの歴史は、1971年、Tri-Sonix.Incという小さな会社から始まった。

    Fenderの副社長を務めていたフォレスト・ホワイト氏、同社のアンプ設計者をしていたトム・ウォーカー氏らが同社を退職後に設立。ホワイト氏はCBS売却後のFender社(1965年売却)に不満を抱いていたようで、1966年に同社を退職。

    ホワイト氏とウォーカー氏は、Fenderの創業者であるレオ・フェンダー氏をTri-Sonix社に招待(フェンダー氏は健康上の問題で1965年にCBSにFender社を売却している)。

    フェンダー氏はTri-Sonixという社名があまり気に入っていなかったようで、Music Manという社名に変えるように提案する。最初はMusitek,Incという社名が候補だったが、最終的な社名はMusic Manになった

  • 1974年
    1974年、フェンダー氏とウォーカー氏の設計で開発されたギターアンプ「Sixty-Five」をリリース。これが同社の初の製品であった。「Sixty-Five」は真空管とソリッド​ステートの技術を取り入れたアンプで、「loud as hell(地獄のように騒がしい)」と銘打っていた。
  • 1975年
    フェンダー氏は、1965年にFender社をCBSに売却した後、10年間の競業避止義務を受けていたが、1975年に法的規制が失効し、Music Man社の社長に着任する。
  • 1976年
    そして翌1976年、Music Man社初となるベースモデルのStingRay(スティングレイ)をリリースする。

    StingRayは、フェンダー氏とウォーカー氏が設計、スターリン・ボール氏がテストプレイヤーとして参加し、開発が進められた。スターリン・ボール氏は、Ernie Ball創業者アーニー・ボール氏の息子で、現在Ernie Ball Music Manの社長を務めている。

    StingRayは別記事で詳しく解説している。

    MUSICMAN StingRay4SLO
    Music Man StingRay(スティングレイ)Music Man StingRayとは StingRay(スティングレイ)は、アメリカのギターブランド・Music Man(現Ern...

    スターリン氏が所有していたプロトタイプ#26を復刻した「StingRay 40th Old Smoothie(オールド・スムージー)」。スペックからヘッドロゴに至るまで当時の仕様を再現している。

    StingRayはベースモデルが有名だが、実は1976年のリリース当初、ギターモデルのStingRay Ⅰも販売されていた。ギターモデルはStingRay Ⅱも開発されたが、1978年頃までしか販売されておらず、あまり普及しなかったようだ。

    ギターモデルのStingRayは2016年に「StingRay Guitar」として復刻している。

    公式ページ:StingRay Guitar | Music Man
  • 1978年
    1978年12月、Sabre(セイバー)という2ピックアップのベースモデルをリリース。当時のStingRayはハムバッカーを1基搭載のモデルで、Sabreはハムバッカーを2基搭載したモデルとして開発された。リリース当初のSabreの個体の一部はヘッドロゴにStingRay Bassと表記されているものも。

    Sabreの売れ行きは思わしくなく、1991年に製造中止となる(2013年に限定復刻版がリリースされている)。

  • 1970年代後半〜1980年代前半
    1970年代後半から1980年代前半にかけてのMusic Man社は順風満帆とはいかなかったようだ。

    当時、フェンダー氏はCLF Research社というコンサルティング会社を持っており、Music Man社の楽器を製造していた。CLF Research社が製造したギターやベースをMusic Man社が検査するという流れ。

    ここで問題が生じる。CLF Research社が製造したギターはポリエステル塗装にひびが発生していたため、CLF Research社に製品を戻し、再仕上げが終わるまで支払いを拒否した。この件で両社の間に亀裂が生じ、1979年の終わり頃にCLF Research社はMusic Man社の楽器製造を中止する。

    そして、1980年、フェンダー氏はFender時代からのビジネスパートナーであるジョージ・フラートン氏とG&L社を設立し、Music Man社を離れてしまう。

    ※G&LはGeorge Fullerton氏とLeo Fender氏のイニシャルが由来

  • 1983〜1984年
    Ernie Ballに買収される直前の1983〜1984年、Modulus Guitarsとのコラボによりグラファイト・ネックを使ったCutlass(カトラス)というベースモデルを販売していた。StingRayを元にした「Cutlass I」、Sabreを元にした「Cutlass II」の2機種。いずれも短命に終わっている。

    Cutlassは同じモデル名でスペックを変えた2016年にリリースされている(後述)

  • 1984年
    窮地に陥ったMusic Man社を手を差し伸べたのは、当時ギター弦メーカーとして成功していたErnie Ball社だった。1984年、Ernie Ball社がMusic Man社を買収し、社名/ブランド名がErnie Ball Music Manとなる

    人気のベースモデル・StingRayは買収後も継続された。ヘッドロゴを「Music Man StingRayBass」から「Ernie Ball Music Man StingRay」に変更。買収前と後のMusic Man製品を区別するため、前者を「プレアーニー」と呼んだりする。

    プレアーニーのStingRayのヘッドロゴ。当時はStingRayBassという表記。

    買収後のErnie Ball Music Manのロゴ。Ernie Ballが加わり、Bassの表記がなくなっている。
    StingRay Special 1H

  • 1987年
    1987年、Ernie Ball Music Manブランドとして初となるベースモデル・SringRay 5をリリース。SringRay 5は5弦ベースで、同社を代表するベースモデルとして不動の地位を得ている。

    当時のスペックを再現したClassic StingRay 5

  • 1987年
    Dixie DregsやDeep Purpleなどでギタリストを務める、Steve Morse(スティーヴ・モーズ)のシグネイチャーモデルをリリース。


    公式ページ:Steve Morse | Music Man
  • 1990年
    Eddie Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)シグネイチャーモデル・EVHをリリース。契約終了後はAXISのモデル名で販売。

    公式ページ:AXIS | Music Man
  • 1990年
    Albert Lee(アルバート・リー)シグネイチャーモデルをリリース。

    公式ページ:Albert Lee | Music Man
  • 1993年
    Steve Lukather(スティーブ・ルカサー)シグネイチャーモデル・LⅢをリリース。

    公式ページ:LⅢ | Music Man
  • 1993年
    StingRayを一回り小さくしたモデル・Sterling Bassをリリース。モデル名はStingRayの開発にも携わったスターリン・ボール氏が由来。StingRayと似ているが別のモデル。

    公式ページ:Sterling bass | Music Man
  • 1999年
    John Petrucci(ジョン・ペトルーシ)シグネイチャーモデル・JP6、JP7をリリース。

    公式ページ:JP6 | Music Man
  • 2003年
    2003年のNAMMショーにて、新しいベースモデル・Bongo(ボンゴ)を発表。BMWのデザインワークスチームと共同で設計されたモデルで、人間工学を取り入れた独自のフォルムを採用。

    公式ページ:Bongo | Music Man
  • 2009年
    Music Manの廉価版ブランド、Sterling by Music Manを立ち上げ。StingRayの廉価版モデルなどを販売。

    前述のSterling Bassと名前が同じだが、前者はギターモデル名、後者はブランド名という違いがある。

    Sterling by Music Man製の廉価版StingRay「STINGRAY RAY34」

    公式ページ:STINGRAY RAY34 | Music Man
  • 2016年
    Cutlass Bass(カトラス)、Caprice Bass(カプリス)をリリース。

    Cutlass bassは1983〜1984年販売のオリジナルと同じモデル名だが、スペックは異なる。オリジナルはグラファイト・ネックだったが、メイプル・ネックに。ピックアップはハムバッカーだったが、スプリット・コイルを採用。現代版ではピックガードの形状も異なる。

    Caprice Bassは2ピックアップ仕様の新モデルで、フロントがスプリット・コイル、ブリッジがハムバッカー。

    Cutlass Bass

    公式ページ:Cutlass Bass | Music Man

    Caprice Bass

    公式ページ:Caprise Bass | Music Man
ABOUT ME
執筆者:稲垣 健太(ケンタトニック)
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

音楽関係の仕事の経験、ギター製作の経験、音楽教室に通った実体験をもとに、音楽に役立つ情報を発信。

■音楽歴
中学2年生の時にギターを始める
高校1年生の時にドラムを始める
大学で軽音楽部に所属し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムを演奏
39歳からボイトレに通い始める
42歳でギタークラフトを始める
└2023年4月にギタークラフトの専門学校・ESPギタークラフトアカデミー大阪校(GCA)に入学
└ギター製作やリペアの専門技術・専門知識を習得中

■音楽関連の仕事歴
[2006〜2009年]
大手CD・レコード販売店でロック、ジャズの仕入・販売を担当。
[2011年〜]
フリーランスのWebライター・Webディレクターとして開業。
大手音楽教室からの委託でボイトレサイトの運営、ボイトレ記事の執筆・編集に携わる。

■音楽教室の通い歴
[1995〜2000年まで]
某大手ギター教室に通う
[1997〜2002年まで]
某大手ドラム教室に通う
[2020年〜現在]
某大手音楽教室のボイトレ・話し方コースに通い中
ESPギタークラフトアカデミーにて月3回プロギタリストによる演奏授業を受講

■愛機
Stilblu #036 / #039 /#099
g'7 special(g7-TLT Type 2S)
Nashguitars S-57
Tom Anderson(Drop Top Classic -Deep Tobacco Fade)
TMG Gatton Thinline
Fender Custom Shop 1956 Stratocaster NOS
Gibson USA Exclusive Model / Les Paul Standard 60s Honey Lemon Burst

所有ギター一覧

■製作したギター
ギタークラフトアカデミー第1作目:
ポリゴンライン
ギタークラフトアカデミー第2作目:
Stand-Alone
ギタークラフトアカデミー第3作目:
Thin-Marauder


■好きなバンド
U2、Sigur Ros、THE 1975、Mr.Children、the band apart、くるり、SIAM SHADE、VAN HALEN

■ブログ
ギタークラフト製作日記
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