ギター用語

変形ギター ‐ 独特な形状の変わったギター

ランダムスター

変形ギターとは

変形ギターは、文字通り変わった形をしたギターのこと。ソリッドボディのエレキギターは、ボディ内での共鳴に頼らずとも大きな音を出すことができるため、形状の自由度が高い。

一体どこからが「変形」と呼ばれるのか、これといった定義はない。ストラトやテレキャス、レスポール、ジャズマスターといった伝統的でスタンダードなシェイプ以外と考えるとわかりやすいが、それ以外でも定番化しているシェイプはあるため、捉え方は人それぞれだろうか。

変形ギターあれこれ

Vシェイプ

変形ギターと言えば多くの人が最初にイメージするのがV字型のシェイプ。1958年にGibsonから発売された「フライングV」は、ソリッドボディのギターの固定概念を打ち破るデザインだった。奇抜過ぎたがためにしばらくは受け入れられなかったものの、ジミ・ヘンドリックスなどが使用したことで徐々に人気を獲得していった。

キングV

RATTのロビン・クロスビーのために、JACKSONが開発したのが「キングV」。フライングVと比べるとボディの下端が鋭く尖っているのが最大の特徴。

ランディーV

こちらもJACKSONが開発した「ランディーV」。その名にあるように、ランディー・ローズのために開発されたもので、左右非対称のボディが特徴的。
JS32

エクスプローラー・タイプ

フライングVと共に、1958年にGibsonから登場したのが「エクスプローラー」。当時は、未来的なデザインという意味で「Futura(フューチュラ)」という名前で発売された。フライングVと同じく当初は人気が出ずに生産が終了されたが、後に再生産されHR/HMの流行と共に広まっていった。

ランダムスター

エクスプローラーのボディエンド部分を深く切り込んだような形状をしているのが「ランダムスター」。星型を引き伸ばしたような形にも見える。LOUDNESSの高崎晃のトレードマークとして知られている。
ランダムスター

ジャクソン・ケリー

Heaven(ヘヴン)というヘヴィメタルバンドのブラッドフォード・ケリーがデザインし、ジャクソンが開発したのが「ケリー」。マーティ・フリードマンが使用していたことでも知られている。

アイスマン/ミラージュ

1970年代、フェンダーやギブソンのコピー製品からの脱却を図るため、星野楽器、神田商会、富士弦楽器製造(フジゲン)の3社で共同開発されたのが「アイスマン」および「ミラージュ」。星野楽器のアイバニーズから発売されたのが「アイスマン」で、神田商会のグレコから発売されたのが「ミラージュ」。KISSのポール・スタンレーを思い出す人が多いのではないだろうか。

ファイアーマン

ポール・ギルバートが前述の「アイスマン」を元にした「リバース・アイスマン」というギターをデザインし、それを元に「ファイアーマン」と名付けられたモデルがアイバニーズから発売された。

B.C.Rich系

1969年に設立され、数多くの変形ギターを生み出したのがアメリカのギターメーカーB.C.Rich。鋭く尖ったデザインのモデル達は、ヘヴィ・メタルバンドの人気と共に広く支持されていった。

モッキンバード

1974年に登場したのが、外向きに生えたツノが特徴的な「モッキンバード」。「モッキンバード(mockingbird)」は、ものまね鳥とも呼ばれる鳥の名前であり、形が似ていることから名付けられた。

ワーロック

1980年代初めに登場したのが「ワーロック」。英語で「ワーロック(warlock)」は、魔法使いを意味している。

ワーロックをさらに尖らせたようなデザインの「ビースト」。

アイアンバード

ランダムスターをツンツンに尖らせまくったようなデザインの「アイアンバード」。

ビッチ

ディンキータイプのボディを下から深くえぐったようなデザインの「ビッチ」。1〜4弦に復弦を張った10弦タイプがあることでも知られる。
bich

その他

ダイムバッグ・ダレル

パンテラのダイムバッグ・ダレルの愛機として知られるのがDean Guitarsの「The Dean From Hell(ML)」。V字型のヘッドもインパクトがある。

ダイムバッグ・ダレルが、生前にデザインしたのがMLを鋭くしたような「RAZORBACK」。

高見沢俊彦

日本で変形ギターというと、真っ先に思いつくのがTHE ALFEEの高見沢俊彦。ESP製の通称「エンジェルギター」と呼ばれるド派手なギターは、見た目のインパクトはもちろん、価格のインパクトもド派手。

高見沢俊彦によるデザインの「ゴジラ・ギター」

今井寿

BUCK-TICKのギタリスト・今井寿のギターもなかなかに独創的。ボディとヘッドがつながっている「スタビライザー」は、FERNANDESからシグネイチャーモデルとして発売されている。

もうひとつのシグネイチャーモデル、通称「マイマイ」。

変形ギターのメリット・デメリット

メリット

唯一にして最大のメリットが、「見た目のインパクト」。派手なギターであればあるほどステージで目を引くことは間違いなし。独特で唯一無二のデザインともなれば、トレードマークにもなる。ヘヴィメタルやヴィジュアル系バンドであれば、世界観の演出にも一役買う存在に。

デメリット

ジャンルを選ぶ

派手デザインに合ったジャンルなら良いけれど、落ち着いたジャンルの音楽に変形ギターはマッチしない。音楽性に似つかわしくないギターを使っているとステージでの違和感も大きく、世界観をブチ壊しにしてしまう可能性もある。

演奏性に難がある

見た目を重視するあまり、演奏性を犠牲にしているデザインも少なくない。特に、膝に置くことができず座って弾くのが困難な形状も多い。フライングVなどは、凹の部分を膝にまたがるように縦に構えたり、ストラップを工夫する必要がある。

スタンドに乗らない

ボディを乗せて支えるタイプのギタースタンドには乗せることができない場合が多い。ヘッド部分を吊り下げるタイプなら対応可能。

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専用のケースが必要

一般的なギターケースは、一般的なシェイプのギターしか入らないことが多いため、変形ギターはそのシェイプに合った物が必要。また、例えば同じVタイプのギターケースでも、微妙にサイズが違って入らない場合があるため、購入時に付いてきたケースから買い換える場合には本当に入るのかどうか確認した方が良い。

ABOUT ME
執筆者:タケ
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

ギター歴23年。

愛機:Gibson Les Paul Custom、Black Cloud Aging Label #022、Stilblu #100、Legator Ninja N7FX

日々、ギターのお勉強中。