ギター用語

タイムレスティンバー / アクアティンバーとは ‐ 水中に100年以上眠っていた木を引き上げて乾燥させた木材

SUGI / DS496C
画像:SUGI / DS496C

タイムレスティンバーとは

「タイムレスティンバー(Timeless Timber)」は、アメリカの五大湖に沈んでいた丸太を引き揚げ、乾燥させたヴィーンテージウッドの名称。アメリカのTimelessTimber社が取り扱っている木材で、家具材のほか、ギターのネック材やボディ材などに使われる。

1800年代、アメリカの伐採会社は、五大湖周辺で伐採した丸太を水路を利用して下流へと運搬していたが、その途中で一部の丸太が湖底へと沈んだ。100年以上もの間、湖底で眠っていた丸太を引き揚げ、乾燥させて製材したのがタイムレスティンバーである。

五大湖の湖底は氷点下の温度と低酸素であるため、木材には保存には最適な環境であった。そのうえ、水中のバクテリアが木材の導管内の不純物を食べ尽くしたことにより、弦楽器に使用したときの鳴りの良さにつながると言われている。木目が詰まったハードウッド(堅い木材)で、硬度が高いのも特徴。

※「timeless(タイムレス)」→「永遠の」「時代を超越した」という意味
※「timber(ティンバー)」→「(製材した)材木」という意味

タイムレスティンバーは商標としての名前なので、水中から引き揚げられた木材の総称というわけではない。次項で解説する「アクアティンバー」のように、取り扱っているメーカーや産地によって名称が異なる。シンカー材(sinker:「沈んだ」の意)と呼ばれることもある。

アクアティンバーとは

「アクアティンバー(Aqua Timber)」は、アメリカのAqua Timber社が取り扱っている木材の名称。アメリカの五大湖、ジョージア湾のほか、北アメリカを通る水路の底に眠っている木材を引き揚げ、乾燥して作られる木材。

1850年~1900年代初頭に伐採された丸太が輸送の途中に水中へ落ち、100〜150年ものあいだ冷たい水中で眠り続けていた。沈んでいた丸太の樹齢は500〜1,000年と言われている。生成される経緯はタイムレスティンバーと同じだが、元々の樹齢や水中の環境が異なるため、ギター材に使用したときに音響特性が変わると言われる。

参照:タイムレスティンバーとアクアティンバー / フジゲン

ギター材として使われるタイムレスティンバーやアクアティンバー

フジゲンでは長らくタイムレスティンバーを使用していたが、資源に限りがあり枯渇してきたため、現在は同様の性質を持つアクアティンバーに切り替えている。

ボディとネックにアクアティンバーを使用したギターの試奏動画

Sugi Guitarsでは、多くのモデルでアクアティンバーメイプルを使用している。タイムレスティンバーと表記されているモデルもある。

ネックにアクアティンバーを使用したモデル・Stargazerの試奏動画。

Sugi Guitarsの特徴やこだわりは、以下の記事で詳しく紹介している。

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HISTORYで使用しているヘリテイジウッド

島村楽器のオリジナルギターブランド「HISTRY」もタイムレスティンバーを使用していたが、入手が困難になったため、「ヘリテイジウッド」と呼ばれる同様の木材を使用している。木目が詰まっているためネックの反りが起こりにくく、バクテリアが導管内の不純物を食べ尽くしたことで倍音が豊かにトーンが得られるそうだ。

※「Heritage(ヘリテイジ)」→「遺産」という意味

参考:Heritage Wood(ヘリテイジウッド) – History

「HISTRY」では、HS・HGシリーズの全モデルのボディ材やネック材にヘリテイジウッドを使用している。

ヘリテイジウッドを使用しているモデルには、ヘッドストックの裏に「Heritage Wood」のデカールが貼られている。

ネックにヘリテイジウッドを使用したHS-SVの試奏動画

ABOUT ME
執筆者:稲垣 健太(ケンタトニック)
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

音楽関係の仕事の経験、ギター製作の経験、音楽教室に通った実体験をもとに、音楽に役立つ情報を発信。

■音楽歴
中学2年生の時にギターを始める
高校1年生の時にドラムを始める
大学で軽音楽部に所属し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムを演奏
39歳からボイトレに通い始める
42歳でギタークラフトを始める
└2023年4月にギタークラフトの専門学校・ESPギタークラフトアカデミー大阪校(GCA)に入学
└ギター製作やリペアの専門技術・専門知識を習得中

■音楽関連の仕事歴
[2006〜2009年]
大手CD・レコード販売店でロック、ジャズの仕入・販売を担当。
[2011年〜]
フリーランスのWebライター・Webディレクターとして開業。
大手音楽教室からの委託でボイトレサイトの運営、ボイトレ記事の執筆・編集に携わる。

■音楽教室の通い歴
[1995〜2000年まで]
某大手ギター教室に通う
[1997〜2002年まで]
某大手ドラム教室に通う
[2020年〜現在]
某大手音楽教室のボイトレ・話し方コースに通い中
ESPギタークラフトアカデミーにて月3回プロギタリストによる演奏授業を受講

■愛機
Stilblu #036 / #039 /#099
g'7 special(g7-TLT Type 2S)
Nashguitars S-57
Tom Anderson(Drop Top Classic -Deep Tobacco Fade)
TMG Gatton Thinline
Fender Custom Shop 1956 Stratocaster NOS
Gibson USA Exclusive Model / Les Paul Standard 60s Honey Lemon Burst

所有ギター一覧

■製作したギター
ギタークラフトアカデミー第1作目:
ポリゴンライン
ギタークラフトアカデミー第2作目(製作中):
Stand -Alone


■好きなバンド
U2、Sigur Ros、THE 1975、Mr.Children、the band apart、くるり、SIAM SHADE、VAN HALEN

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